「人は○○で変わる」
と聞いて、○○に何を思い浮かべますか?
この問いかけをしてくださったのは、健康社会学者の河合薫先生。
先日開催されたライフ・ワーク・バランスEXPO 東京2019で講演を聞く機会があったのですが、とても心に刺さるお話をしてくださいました。
(お顔に見覚えがあると思ったら、元報道ステーションのお天気キャスターでした!お美しかったです。)
「人は○○で変わる」
私の周りの人にアンケートしてみたところ、「出会い」「境遇」「周りの人間」などという答えが返ってきました。
健康社会学者である河合先生の答えも、ズバリ「環境」。
「人は環境で変わる」
皆さんも、これを聞いて自分に覚えがあるところがあるのではないでしょうか。
私も、環境によって大きく変わってきた自覚があります。
しかし一方で、私が行っているホリスティックヘルスコーチングでは、「環境に左右されない、自分自身の軸」を見つけるサポートをします。
では、
- 人は、環境によって変わる??
- 環境にも左右されない自分の軸が大事??
この2つは、矛盾しているのでしょうか。
あなたはどちらが大事だと思いますか?
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人は環境で変わる
まずは私が、
「ああ、確かに人は環境で変わる!!」
と特に強く首を縦に振った、河合先生の次の問いかけをご紹介させてください。
”ある程度社会人経験を重ねると、誰の心にもきっと、心に強く残っている上司がいると思います。
「こんな時、あの人ならどうするだろう?なんて言うだろう?」つい考えてしまう上司はいませんか?”
私にも、います、います!
住友商事で働いていた頃、心から尊敬する上司に恵まれました。
その上司に出会った頃、私は人生に迷い、やさぐれていました(笑)
やる気いっぱいで会社に入ったはいいけれど、毎日深夜帰りの仕事に疲れ果て、更に当時はまだレアな女性総合職として、自分の今後のプランや人間関係など、なんだか仕事以外の部分の方が悩みが多い。
希望が見出せず、一体自分がどうなっていくのか皆目見当がつかず、今振り返ってもとても苦しい時期でした。
そんな時、仕事は超優秀、人間的にも素晴らしい最高の上司にめぐり合いました!
あまりにその上司がキラキラと仕事をしているものだから、気づけば自分も、
「絶対そっち側に行きたい!」
と夢中で仕事をする日々。
いつの間にか職場がすごく楽しい場所に変わっていました。
いまだに困難にぶつかると、「あの人ならどう対応するだろう?」と思い出すことがあります。
それぞれタイミングや体験は違えど、きっと皆さんの心の中にも、尊敬する上司がいるのではないでしょうか?
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環境にも左右されない自分
人は環境で変わる。
これは、間違いなくその通りだと思います。
一方で、冒頭述べたような「環境に左右されないような自分の軸」を見つけることは、それにどう関わってくるのでしょうか。
なぜ私が「環境に左右されないような自分の軸」を見つけることが大切だと思ったか。
それは、環境は選べないからです。
環境によって、ポジティブにインスパイアされるのは素晴らしい体験です。
でも一方で、環境によって腐るのは嫌ですよね。
雨が降ったら気が滅入り、晴れたら元気になる。
そんな風に外部環境にグリップを握られるような、自分の健康も幸せも外部に委ねられているような他力本願な生き方は嫌だと思ったのが、私がホリスティックヘルスコーチングを学び始めたきっかけの1つでもありました。
実際に、「環境に左右されないような自分の軸」を見つけたクライアントの方々は、健康のみならず、キャリアの面でどんどん自己変革を起こされています。
第二次世界大戦中、精神科医であったユダヤ人のヴィクトール・フランクルは、強制収用所の中でナチスから究極に貶められる体験をします。
しかしフランクルは、そこで大きな気づきを得ました。
“人は強制収用所に人間をぶちこんで全てを奪うことができるが、たったひとつ、あたえられた環境でいかにふるまうかという、人間としての最後の自由だけは奪えない”
(「夜と霧」より)
もちろんこれは極論で、そんな状況でも高潔な精神を保ってふるまえる人間はごくわずかでしょう。
環境に流されないということは容易ではないことですが、それでもやはり、どんな状況にあっても、それにどう反応するかは自分次第。
人間というのは、どうふるまうかを自分の意思で決定することのできる、唯一の生き物です。
「自分」はどうしたいのか、どうありたいのか。
それを自分がしっかり認識すること。
人は環境で変わるものだからこそ、環境にも左右されない自分を持とうとすることが大切だと考えています。
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自分も人を変える
もう1つ忘れてはいけない側面ですが、
自分自身も、環境を構成する一部である
ということ。
つまり、自分にも人を変える影響力があるということです。
特に、年齢や経験を重ね、部下ができたり発言力が強まったりすることで、その影響力は強まる傾向にあります。
自分の振る舞いが、人を腐らせたり、輝かせたりするかもしれない。
そしていずれ、自分が環境として人に与えた影響は、結局環境となって、自分に返ってきます。
「おはよう」と言っても、誰も返事をしてくれない組織に所属していたら、自分も挨拶をやめてしまうのが普通でしょう。
しかしそれでも、「おはよう」と言ってみると、挨拶する組織になるかもしれません。(地味ですが、これは私が心がけていることです!)
- 環境に左右されない自分であること。
- 良い環境を築くこと。
一見矛盾しているようにも感じられますが、どちらも大切で、環境にも左右されない自分の素晴らしい軸を持つことで、良い環境を築いていけたら最高じゃないかと。
そうすれば、たとえ自分の軸が不安定になってしまい、状況に流されそうになった時でも、そんな時はお互い様、と環境が助けてくれる。
自分の心に残っている上司のように、自分も誰かの心に残る上司になれたら素敵ですね。
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(詳しくは紹介しきれませんでしたが、人は環境で変わるのだから、より良い環境を作っていきましょうよ、という河合先生のお話は素晴らしく、是非著書も読んでみたいと思いました。
冒頭の講演で、私の後ろに座っていた人は、「超いい話だった、上司に聞かせてやりたいわっ!」と熱くコメントされていました(笑)
ちなみに、河合先生によると、環境を切り口にするのが健康社会学のアプローチとのこと。
一方で、自己の内面を切り口にするのは心理学のアプローチ。
どちらも無くてはならない学問ですね。)