digestion

便を調べれば、あなたが痩せているか太っているか分かる!?

腸内細菌ってすごいこと、ご存知ですか?
自分の体は自分がコントロールしている、と思いがちですが、実は我々は腸内細菌を始めとする共生細菌にコントロールされているのかもしれません。
そんなバカな、と思う方も多いと思いますが、最新の研究結果を知れば、少し考えが変わると思います。

日本橋で開催された「マイクロバイオーム研究開発の最前線」というシンポジウムに参加して、世界最先端の腸内細菌叢(そう)の研究について聞いてきました。
これを知っているのと知らないのとでは、生活をする上で大きな意識の差が生まれるだろうというお話が聞けましたので、是非ご紹介させてください。

https://www.link-j.org/event/item/747088b1557a31cd46a5e9c0106d9b79d4e271f2.pdf

シンポジウムの目当ては、カリフォルニア大学サンディエゴ校ロブ・ナイト教授のお話。

ナイト教授は、医学部・ジェイコブス工学部教授 兼 マイクロバイオーム・イノベーションセンター創設ディレクターであり、2017年にアメリカの生命科学の賞であるマスリー賞を受賞された、まさにマイクロバイオーム研究における第一人者です。

 

 腸内細菌叢(そう)

マイクロバイオームとは腸内細菌叢のことです。腸内細菌叢とは、腸内フローラ、つまり腸内における細菌の集まりのことを指します。

少し前にNHKで腸内フローラについて特集が放送されたことで、特に腸内細菌叢について関心を持たれている方も増えてきていると思います。

人体には、腸内はもちろん、皮膚、口腔内、膣内など、様々な所に微生物が生息しています。ナイト教授がユーモラスに語るには、人体において、人間の細胞は約30兆個、微生物の細胞は約39兆個、なんと人間の細胞数より微生物の細胞数が多いんですね。微生物がいなければ人間は生きていけず、微生物と人間はまさに共存しています。

ちなみに、小さじ一杯の便からは、DVD1トン分の情報量がとれるそうです(笑)

 

マイクロバイオームが秘める可能性

ナイト教授によると、マイクロバイオームを見れば、その人が太っているか痩せているか、なんと9割の確率で分かるそうです。

では、その因果関係(腸内細菌のせいで太ってor痩せているのか、それとも太っているor痩せているからマイクロバイオームに特徴が出るのか)は?というと、少なくともマウスにおいては、マイクロバイオームは肥満の原因ということが分かっています。無菌状態のマウスに肥満の人の細菌叢を移植したところ、マウスは肥満になり、そして、痩せた人の細菌叢を移植したところ、マウスは痩せたそうです。

しかし、これを人間に応用できるかはまだ明らかになっていません。

マイクロバイオームの多様性は、様々な疾患と関係があることが分かってきています。今後様々な病気の治癒のためにも、物凄い可能性を秘めている分野です。世界中の一流の研究機関や企業が研究に力を注いでいます。人体のマイクロバイオームについて完全に理解できるようになるには、まだまだかなりの時間を要しそうとのことですが、全てが明らかにならなくとも、肥満や疾病の改善に対する便益を得られるようにはなるだろうという、心強い見立てでした。

尚、抗生物質を使用すると、マイクロバイオームを顕著に乱すことがナイト教授の研究結果からも明らかになっていますので、抗生剤の不要な摂取は避けたいですね。

私も昔は”抗菌”という言葉に惹かれて、なんでも”抗菌”と書いてあるグッズを選んでいましたが、抗菌グッズをむやみやたらに使うことで、人間にとって不利益な菌のみならず、必要な菌まで殺してしまいます。目には見えない世界なので、正しい知識を持つことが大切ですね。

 

食べ物が腸に与える影響

そのような中、ナイト教授のお話の中で特に印象に残った話。それは、”Food is a language that speaks to our genes. (by Jeffery Bland)”ということ。簡単に言うと、「食べ物は、体に送られるメッセージである」ということです。

世界では数多くの食べ物の研究がなされています。でも、食べ物が人体にどのような影響を与えるかという研究は、とても難しいということでした。

例えば、体重に影響する食べ物について長期間追跡調査したものがあり(サンプル数をメモするのを忘れましたがかなりの数でした)、一般的に体重を一番減らす食べ物はヨーグルト、逆に一番増やすものはフライドポテトだということが分かりました。でも、これは全体の平均値をとった結果であり、人によっては逆の結果も出ていたりと、個人差がとても大きく、平均値からこれらの食べ物を結論づけることはできない、と。

また、イスラエルでの800人を対象にした血糖反応の研究結果では、人によって何の食べ物に血糖値が大きく影響されるか全然異なるという結果が出たそうです。例えば、血糖値の上昇という意味では、米よりアイスクリームの方が適しているという人もいるとのこと。その人特有のマイクロバイオームがそれぞれの食べ物への血糖反応の違いを生み出している、ということです。平たく言うと、個性、ということですね。(ちなみにホリスティックヘルスの分野では、これをbio-individualityとか、生化学的個体差と呼んだりします。我々はみんな全員違うのです!)従って、あの食べ物が体に良い、的なことがよく囁かれますし、流行りますが、それが本当に真実かどうかの解明はされていないことの方が多く、更にそれが万人に当てはまるかというと、そうではないんですね。

 

 健全な腸内環境のためには?

では、どうすればマイクロバイオームを変えられるか?そもそも、一体どの微生物が体内のどの部分にいるのが健康に良いのかor悪いのか?

これらの問いに対してクリアに答えられるようになるには、まだまだ課題があるそうです。マイクロバイオームには、遺伝や年齢など、変えることが難しい要素も関わっていることが分かっています。しかし、ナイト教授曰く、

「マイクロバイオームは摂取する野菜の数で変わることが分かっているので、年齢や遺伝などの変えられない要素について考えるのではなく、たくさんの野菜を食べましょう!」

すごいですね、最先端のマイクロバイオームの研究者が言うことと、世の中のお母さんが言ってることは、一緒です(笑)

最先端の研究結果を知らずとも、経験則から、野菜が大切だということを人間は分かっているんですよね。

上記のお話は、ナイト教授の難解なこともたくさん含まれるプレゼンの中のごく一部の内容ですが、私の中で一番印象に残るとともに、超一流の研究者でありながら、一般の人の生活にとって何が大切か?という目線をしっかりと持っているナイト教授のファンになってしまいました。

 

将来的には、毎日自分の腸内環境が分かる日が来る!?

ちなみに、これらの知識に最新のICTを掛け算して、人々の生活に活かせるような色んなアイディアがあるようです。その中にスマートトイレというものが挙げられていたのですが、トイレに機器を設置し、便を流したら、スマホにすぐにマイクロバイオームの結果が出てくる・・・と!!面白いですね。将来的には、自分のマイクロバイオームを当たり前のように簡単にチェックでき、健康管理に役立てられるようになるのでしょうね。

今はまだ容易には自分のマイクロバイオームを知ることはできませんが、見ることができなくても、第二の脳とも言われ、免疫の要である腸は、やはり体にとって本当に大切であり、日々の食事の選択が腸の健康を左右していることを改めて認識しました。

1 thought on “便を調べれば、あなたが痩せているか太っているか分かる!?”

  1. 難しいトピックをわかりやすく、読みやすく、楽しくありがとうございます😊
    まな学ばせたもらいました✨

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です